1-F/ワイドグライド化
2-F/メッキハブ,ベノムΧ
3-F/ネス製4ポットキャリパー
4-ONEOFFレイクツリー
5-5.5インチヘッドライト
6-6インチライザー
7-PMマスター
8-3.5G分割タンク
9-ネス製フォワコンキット
10-ONEOFFシングルシート
11-6インチフラットフェンダー
12-R/60本スポーク,150ベノムΧ
13-R/ネス製4ポットキャリパー
14-サイドナンバー造作
15-リジッドバー
16-ショットガンマフラー
17-S&SスーパーEキャブ
18-アルマイトプッシュロッド
19-キャンディブルーペイント
20-コンチネンタル/イラスト



「ハーレーダビッドソン&マルボロマン」通称マルボロマン・カスタムといえば、我ら中年バイカーを甘酸っぱい青春の1ページな気分にタイムスリップさせてくれる伝説のカスタムです。そのスタイルを心底リスペクトするオーナーの強い意志をシックス・モーターサイクルが21世紀の現在に具現化させたのが今回のカスタムです。そのため、ベース車両がスプリンガーだったのでフロント廻りをごっそりと変更する羽目になりましたが。
日本での公開は1991年ですからもう16年も前になりますが、時期的にハーレーブームも過熱する以前の空白時でハーレー専門誌もまだ創刊されておらず、たまに発売されるハーレー特集の別冊を舐めるように何度も熟読し、場末のレンタルビデオ屋でマニアックなバイカームービーを捜しまわるのが当時の私の唯一の楽しみでした。常に新しい情報に飢えていたローテクな時代だったのです。
そんな慢性ハーレー禁断症状だった私にある日、ある雑誌のコラムでの写真が心にズブリと深く突き刺さりました。当時私は仮にも美術大学の学生だったので「美術手帳」略して「B.T」という美術系の月刊誌を購入していたのですが、「ウエスト・コースト・アート」という特集の中で(今で言うところのロウ・ブロウ・アートのことです)モーターサイクルの項があり砂漠の路上に佇む全く新しいスタイルのハーレーに乗るミッキー・ロークのフォトが紹介されていました。「何これ?派手な革ツナギでハーレー?FXRでワイグラ?リアはタイヤだけ?鋲打ちの丸い革バッグ装備?ロードモノ映画?近未来設定だって?なにより金属剥き出しのタンクに手書きのペイントが荒々しくてカッコイイ!ナニナニ?近日公開だって!」たった1枚の写真がもたらした青春の霹靂でありました。
しかもタイムリーなことに当時出来たばかりの梅田ロフトに船場さんのハーレーイベントが開かれることになり、映画の宣伝のために例のハーレーも展示されると聞きつけ、居ても経ってもいられずに早速見に行きました。はやる心を押さえつけトラスの並ぶ会場に入ると、並み居るビンテージハーレーの中に一際ライトアップされたコーナーがあり、ミッキー・ロークのパネルと共にあの夢にまでみたシルバー・ハーレーが!
「…汚ぇ、錆でえらく大変なことに。ビニール配線も剥き出しかぁ…、妙に平たいなぁ、マフラーも何か変。」とまぁ、思いの分だけ現実はドライな存在でしたが今までにない斬新なスタイルだったのは事実です。それからこの展示車両は、お化粧直しを施され日本に居残ることになりハーレー&アメリカンバイクを巻き込んでの大ブームに発展するのは皆さん知ってのとうりです。まさにハーレーカスタムのエポックメイキングなチョッパーと言えるでしょう。
近年になり「ブラック・デス3」という名前も解りましたが、すっかりマルボロ・ブームも去り「あのカスタムは今!?」ってな感じでしたが、あの強烈なインパクトは心の奥底で青春のほろ苦い思いと共に燻っています。この度のオーナーもきっと同じ想いを胸に秘めあえて今このスタイルに踏み切ったのではないでしょうか。想いの分だけ駄文も長くなりましたが「マルボロマン・カスタム」(このネーミングには異論もあるでしょうが、あえてこれで明記します)のレポートにいってみよう。



ハンドル廻りは、お約束の質感の高いビレットとクロームの組み合わせ。こだわりの6インチ・ライザーと共にマルボロマン・カスタムのキモとなるポイントです。オリジナルは実のトコロ、もっとあっさりとした仕様なのですがイメージが強調されているのか日本ではビレットパーツが多用されます。ブレーキレバー関係はPMでゴムスリットの入ったグリップはキジマ製。当時はグリップ交換というと皆アルミだったぐらいです。ミラーも冗談のようなアレではなくて実用的なものをセレクトしています。 余白 洗練されたビレット&クロームとワイルドなスチール素材との融合があのスタイルの斬新さでしたが、あくまでも映画のガジェットとしての仕様で特に雨の多い日本の気候には合いません。ましてラットなど珍しくもない現在キレイに仕上げます。ベースカラーの鮮やかなメタリックブルーに例のロゴをアレンジして、オーナーのオーダーで何故かパチスロ吉宗キャラクターを配置。オリジナルの荒々しさを押さえ遊び心溢れるポップな雰囲気に仕上げました。



私をおおいに失望させたあの珍妙なドラッグ・パイプは再現せずにクロームメッキのショットガン・パイプに。専門誌でも記事にありましたが何故あのようなマフラー造作だったのでしょうか?ロークのオリジナルもそうなの?撮影中のアクシデントによる急造品かとも考えましたが、オリジナルのカスタムを手掛けたバーテルズが所有する撮影用クローンバイクも同様のマフラーなので、これは最初からフィルム写りだけを考慮してワイルドさを演出した造作だったのかも知れませんね。
キャブはS&S社のスーパーEをチョイス。もちろんエアクリーナーは映画のようには派手には揺れません。リアスポークはノーマルより少し多い60本用のリムとメッキハブを使用しています。
余白 鏡面仕上げのビレット反射も眩しいフォアード・コントロールはこのスタイルのポイントではありますが2つ理由で当時の我々を悩ませました。1つは見た目のとおりの高価なプライス。ビレットパーツで構成されているので学生には高嶺の花でした。もちろん今回はオーナーは立派な社会人、懐具合もそう気にする必要もなく、よりエレガントなデザインの大御所ネス製をセレクト。2つめは平均的な日本人には酷なポジションであります。ハリウッド俳優ならともかく脚の短い市井の者にはリーチが足りません。が、これも選ばれし体格のオーナーは楽々クリアー。今回は事なきを得ましたが、想いだけではどうにもならない体格からくる制限がドラッグバーとフォアコンの組み合わせのこのスタイルを乗りこなすうえでの難関なのです。



理想のフォルムを再現すべくオーナーが特にこだわったフロント廻り。6インチ延長されたフォークに組まれるのはワンオフされたビレット・レイクツリーであります。オリジナルはノーマルワイグラをネックを寝かせ加工したものでしたが、ここ日本では法律の問題からこのレイクツリーで再現されることがほとんどで、この度もその伝統の手法に則っております。しかし、オーナーが指定したレイク角は、なんと13度!当時でさえ5度や8度が主流でそれ以上の角度は走行に支障をきたすと言われていましたから、これは無茶なシロモノであります。オーナーの想いは物理法則さえ凌駕するのでしょうか。神のみぞ知るところであります。アーメン。 余白 オリジナルがFXRベースにも関わらず、そのリア廻りの軽快さからなのかソフテイルがベースに選ばれるマルボロマン・カスタム。多くの場合クラシックなスタイルであるはずのフラットフェンダーにモディファイされますが全く違和感を抱かないのが不思議です。今回はチェーン仕様で150ワイドタイヤを履かせていますので6インチ幅フェンダーを加工しています。
そして最後のキモはサイドマウント・プレートにブレーキランプ。オリジナルと同じくルーカスをチョイス。このサイドマウント、それまでマイナーな手法でしたが、この映画で一気にブレイクしました。映画のバーコードナンバーは、あまりにアレでちょっといただけませんでしたが。

        JUL.2007