1-F16インチ
2-R15インチ/ワイドリム
3-純正フレーム
4-純正スプリンガー/ナックル用
5-ハリウッドバー/小型スイッチ
6-純正タンク
7-メーターダッシュレス
8-ワンオフ・ターンアウトマフラー
9-ワンオフ・シッシバー
10-ワイドリアフェンダー
11-陸王流用リアランプ
12-ワンオフ・ソロシート
13-メタリックグリーンペイント


のっけから内輪ネタで申し訳ありませんが、シックスではいまさら何故か旧車がアツいことになっています。常連仲間がショベルからパンヘッド、またはフラットヘッドにと続けざまに乗り換え、その手放したショベルをエボ組が手に入れるという連鎖があり、シックスの常連バイクの平均製造後年数がグンと大きくなりました。シックスではディラーとは違い取り扱う中古車の年式の幅が広いので色々な年式のハーレーに触れる機会が多く、普段のツーリングなどでの言動から、ツインカムやエボを普段乗っている人にもショベルはただの中古車、パンヘッドぐらいまでなら普通に乗れる(金額的にも)旧車かなという認識が出来上がっていて、タイミングさえ合えばちょいと乗り換えることなどに抵抗はないようです。もちろん、旧車の苦労話も十分知ったうえでの行動ですよ。いくらなんでも良いことばかりではありませんからね。ただ、旧車に対する都市伝説的な偏見がないだけです。
さて、前置きが長くなりましたが今回の1949年式のパンヘッドは上記のようなショベルからの乗り換えオーナーで、 モノは素性の大変良いバスケット状態から組み上げた一台となります。エンジンは額面通り49年式で書類ではEL(1000cc)ですが中身は1200ccにう排気量アップ、フレームも嬉しいことに同じく49年式純正フレームですが、恐れ多いことにワイドタイヤとのクリアランスを確保するがためだけにツールステーを大胆にカットしました。それに装着されるスプリンガーフォークは47年式以前のナックル純正フォークが組み合わされています。車輌の程度が超高価なバリモノか、お話にならないボロかの両極端に分かれている旧車事情の今日、このようないわゆるオイシイ個体のベース車は探してもそうはありません。タイミング良く乗り換えることのできたオーナーはきっと一生分の運をこのバイクに注ぎ込んだに違いありません。きっと!
残りの人生は不幸続きが確定されたオーナーは私のような困った旧車オタクではなく、ごく普通のまっとうな人物なのでカスタムの方向性としては、お宝パーツがどうのとか年式相応がこうのとかいうような却って自由度を狭めるような邪念に心を犯されることなく、純粋にスタイルとしてのパンヘッド・ボバーとしてカスタムを進めました。リア-ワイドリムの15インチ、フロント16インチのチト変則的な組み合わせにハンドル高が低く補助パイプが特徴的で何故か名前がシネマなハリウッドバーを装着。さらにタンク廻りはメーターレスなので横から見るとノーマルより低く構えたスタイルになります。
最後はバイクの印象を左右するカラーリングなのですが、ここにきて色決めに優柔不断なオーナーのために最後の最後まで決まらなかったのですが、いよいよ完成予定日が迫っていましたので、派手過ぎず地味過ぎでもないさしあたって当分の間飽きの来ないであろうという判断の元、渋めのメタリックグリーン系とオーナーに代わって我々が半ば強引に決めました。でも旧車の場合、単色なら上手く色調を調整すれば赤や青と並んで間違いの無いカラーだと思います。
完成して早速、岡山のミーティングへ慣らしついでに私も一緒に出掛けましたが、心配していた初期不良も無く、さらに1200ccゆえに加速も素晴らしく、高速道路でも実に快調に走る姿を見てやっぱり旧車はイイなとちょっぴり羨ましかった一幕でした。


純正ハンドルのタイプでは最も低い部類に入るハリウッドバーハンドル。真ん中に補強のためかライトステーなのかはっきりしませんが、緩いアールを描くパイプが特徴的なハンドルで人気のあるハンドルです。今回は純正タイプのインナースロットルに手動進角のため、最近の幅の狭いカスタムスタイルを見慣れるとかなり幅広に見えますね。
ボバーらしくメーターダッシュは取り払われ、代わりにランプ類は小さなパネルを製作してタンクの間にあるフレームに取り付けられ、メインスイッチはミッション近くに移設しました。

最近は再現度の高いレプリカタンクが発売されていますが、やはり純正タンクの素晴らしい雰囲気にはチト及ばないようです。塗装の写り込みを見れば判るように、ただ単純なアールだけで構成されているだけではなく緩いアールから場所によっては鋭角なアールもあり複合的なアールでタンクが構成されています。やはり、最低限はこだわりたいものですね。
残念ながらタンクメダリオンはレプリカものですが、シフトノブは最初から装着されていた当時モノのメッキボール。ただの球体ではなく下部にドングリのようなカサがある凝った造りです。


エンジンは腰下までバラして完全オーバーホール済みでコンデションは上々。当分の間は安心して乗ることが出来るでしょう。書類上エンジン形式はELですので1000ccなのですが、シリンダーやクランク等純正パーツで1200ccのものに交換されていました。
パンのネーミングの元になったヘッドカバーは、タッパの高いステンレス製を装備、それに当店自慢のスペシャルパッキンを使用。リンカートキャブは排気量相応のM-74Bで今のところエアクリーナーレス。何気に雰囲気の良いキックペダルが付いていますね。

マフラーは腹下を通る微妙に先端の曲がったターンアウトドラッグパイプをワンオフしたもの。このエンジンやたらと元気の良い個体で加速も素晴らしく現在まだ慣らし中なので最後まで確認出来ませんが高速域もかなり見込みがありそうで喜ばしいことなのですが、サイレンサーが内蔵されているにもかかわらず、アイドリング時もそれに比例してかなり騒がしいのが困ったものです。
この写真ではよく判りますが、リアタイヤ前にあるべきツールステーがフレームからばっさりとカットされています。


ハンドメイド感溢れる小振りなソロソートは、シックスで社外のベースを加工して外装は本格的なレザー職人の手によるもの。写真を見てもすぐ判るように独特な光沢で質感のあるレザーでシート用というよりもレザージャケットをそのままシートに移し変えたような雰囲気に仕上がっています。今回は質感重視のプレーンなスタイルでしたが、さまざまなレザーの表現方法に熟練された職人ということで、私もこのシートの出来を見てひさびさにビビッとくるものがありました。

諸般の事情によりあまり深くは語れない15インチのワイドリムに思い切り引き伸ばしたタイヤをはめたリアスタイル。タイヤのアールにきれいに沿ったリアフェンダーには何故か当店に昔から在庫していた日本が誇るパチものハーレー陸王のリアランプを流用。配線はあえて横出しで見せる配線として処理して、シンプルなアール加工のシッシバーに這わせています。クローズドプライマリーはオープン仕様全盛の今では、かえってワルの雰囲気ですね。


SEP .2009