1-基本的にU.S.A仕様
2-F.21インチ/1.60インチナローリム
3-R.16インチ/アルミHリム
4-フロントフォーク延長/スタビライザー
5-ファイバー製/トンガリ.フロントフェンダー 
6-XLRスタイル/ドラッグパイプマフラー
7-段付きビンテージシート
8-No.1エンブレム付きシッシーバー
9-プルバックハンドルバー
10-純正サザエキャップ


この奇妙なアイアン・チョッパーは、このままの状態でアメリカから輸入した車輌でシックス・モーターサイクルで製作したものではありませんが、一部のマニアには垂涎もののバイクではないかということで掲載しました。
どうでしょうか?ロー&ロングやらビンテージのお宝パーツなどとは無縁のカスタムですが、現在の新進気鋭の日本人ビルダーとはまた違った発想で手を加えられたアメリカ人ならではのバイクではないでしょうか。いかにも狙って製作しているようでありながらも、やはりローカルバイカーの兄ちゃんが、ただ自分の乗りやすいようにテキトーに好きなパーツを組み付けました的な詰めの甘さがそこかしこに感じられるチョッパーなんです。凝り性の日本人ならこだわるであろう、デザインがどうのスタイルがこうだなんて関係なく、その場のノリで出来ちゃった、旧車マニアからツインカム乗りまで誰でもひと目見て「おバカで危険なアウトロー」の雰囲気を感じさせる、計算づくではない本能的なオーラを放っています。そのように我々が感じるのはアメリカのモノというよりは、このチョッパーに憧れのアメリカ・カルチャーの空気感のようなものを感じるからではないでしょうか。
現在の日本のハーレー・カスタムは チョッパーを代表するアウトロー・カルチャーから多くの影響を受けています。ただし、アウトローはアウトローであって我々の暮らす日本ではそいつらにはなれません。それだけに、カスタムにどう不良のエッセンスを取り入れていくかに一生懸命な訳です。そんな我々の苦労をあざ笑うかのようにこんなチープでふざけたチョッパーが易々と乗り越えてしまう、しょせん借り物文化の日本では立ち入れない領域が存在するのでしょうか。アメリカという偉大なブランドの重さを感じさせるチョッパーだと思います。
アウトローを表現する、たしかに当時のヘルズ・エンジェルズはバイクのファッションもクールでした。我々の世代のハーレー乗りはみんな彼らにかなり影響を受けているんではないでしょうか。このバイクはもう既にオーナーが決まっているのですが、彼もまたそのカルチャーに深く興味を抱いた一人でしょう。なにせ、バリバリのカスタム・リジッドチョッパーからの乗り換えですからね。このチョッパーが違和感なく乗りこなせるよう彼には頑張ってほしいものです。
私の頭の中ではヘルズ・エンジェルズというと旧車チョッパーと古ぼけたジーンズに年季の入った傷だらけのデイトンノエンジニアブーツ。ポリス払い下げのヤレた革ジャンか軍モノのジャケットの上にデスヘッドを背負ったベスト。まっ黒なサングラスに反体制のシンボル的なM-35ナチスヘルメットなんてイメージがあるんですが、現代ではそのままではコスプレっぽいとはいえ、不良っぽいニオイに憧れるのは男のサガですからね。
ただ、先ほども書いたように我々は日本人でアウトローではありません。この世界は絶えず社会とも向かい合わないといけないという側面もあって、それがきちんと解った上で不良をやるべきなんでしょう。ファッションもバイクも古いだけでは格好悪いですからね。


どこの製品か調べようもないタレたプルバックハンドルにぶら下げられた大きな純正のマーカー。クロームのスイッチボックスに2連の純正メーターがこれ見よがしに残されています。フロントタイヤは21インチに変更され、1.60インチのナローリムが使われています。たた単純に長いのが欲しいという欲求によって延長されたフォークで走ってみて、初めて解ったであろうフロントのブレに対処したねじれ防止のスタビライザー。
純正のサザエキャップに、以前のオーナーが何を意図したのかトリッキーなる英文が入ったガソリンタンク。

これがなくてはアウトローの魅力が半減してしまうとばかりにギラギラのクロームメッキが施されたアイアン・エンジン。現在のスポーツスターではクロームエンジンは格上の証ですが、アイアンではおバカで悪趣味の証拠です。ただし、このエンジン見た目とは違いボロいアイアン特有のエンジンノイズも少ない優等生だったのは驚きでした。
当店で唯一、手を加えたのがマフラーで、おバカなマークが有名なサイクル・シャック製のXLRスタイルマフラーを装着。これは見た目たがわずにアウトローなメロディを奏でてくれます。


このバイクの不良っぽさを決定つけているのが、製作車名不明な段つきシートと純正シッシバー。写真では裏側になるので解りませんがシッシバーは70年代のNo.1プレートが入った純正モノなので、ひょっとしたらこの段つきシート、厳ついフォルムに似合わず純正品なのかもしれません。そう考えると打ち込まれたボタンの処理など高級品に見えてくるから不思議です。
日本ではアウトローな扱いのリアの赤いマーカーレンズもアメリカの州によっては法に則った正規な保安部品。日本の法外の外車だと再認識させられる箇所です。

このバイクのビルダーがただ者ではないと感じさせるリア廻りの処理でありますが、実際はひょっとしたらこれしか手元になかったのかもしれないと勝手にこちらで深読みしすぎてしまい自問自答させる罪つくりなHリム。これは珍しい16インチのH型アルミリムでどこの製品なのかさっぱり解りませんがこのチョッパーには大変良く似合います。
Hリムならスポーティーさが信条で本来なら王道サイズの18インチだと思うのですが、何故にファットな16インチを組み込んだのか常識にとらわれがちな私には、いまいち理解できませんが、見た瞬間に「これカッコイイな!」 と感じた自分の感性を信じます。


APR .2009