1-24インチオーバースプリンガー
2-フレーム加工
3-2.2ガロンマスタングタンク
4-5インチフラットフェンダー
5-ワンオフテールライト
6-ワンオフソロシート
7-ワンオフドラッグパイプ
8-SUキャブ
9-1.5インチオープンゲルト
10-スーサイドジョッキーシフト
11-3インチライザー、ドラッグバー
12-4.5インチヘッドライト

「チョッパーは大好きだけど,ロングフォークは嫌い」といつも暴言を吐いているシックスモーターサイクル製作スタッフですが,「初めてのハーレーダビッドソンだけど,リジットショベル・ジャッキーシフトにスーサイドクラッチそして漢の夢,超ロングのスプリンガーにしてほしい」という恐ろしく無謀,もとい男気あふれるオーナーの心意気に押されて製作したロングスプリンガーチョッパーです。
造ると決めたなら,どのようなスタイルであれ,思う存分腕を振い,ちょっと他にはないような,チョッパーを製作するというスタンスで,しかし昨今流行りのネック位置の高いウェストコーストスタイルを避け,70年代全盛のいにしえのオールドチョッパーをシックスモーターサイクル流にアレンジして21世紀に再現してみせました。
ロングホークチョッパーはスタイルがずば抜けて特徴的なのでそのイメージをよりストレートに表現するべく格パーツ類は極シンプルに表面処理もメッキ加工は避けあっさりとブラック塗装で仕上げてあります。フロントまわりをより強調させるため車体部分は小さく車高は低くなるように,純正フレームをハードテール化,フレーム上部を前には延ばさず上に5インチストレッチ,ネック角はロングスプリンガーを装着して尚,アンダーフレームが地面と平行になるように大きく寝かせました。また,ロングスプリンガー以外はいつもの旧車チョッパーと同じような手法で製作。そのため,思いのほかコンパクトなポジションがとれ,楽な姿勢でこのロングスプリンガーチョッパーを操つることができます。ハンドルの重さだけは別ですが。
このチョッパーが徐々にカタチになるにつれ、アンチロングフォーク派だったスタッフもその美しいスタイルに心を揺さぶられたのか「ロングフォークもカッコイイなぁ」と呟いておりました。
さて,4月に大阪の舞州で開催されたジャンボリーでこのバイクのおひろめを兼ねてオーナーの試乗がありました。会場の真ん中に置いてありましたので会場に足を運んだ人も多いと思います。オーナーは,なにぶんジャッキーシフトにスーサイドクラッチが初めてなら,キック始動も初めて,それどころかハーレーダビッドソンに乗るのも初めてという初心者。普通のハーレー乗りなら2年から4年ほどの経験をふまえて,その中でも極一部の人のみが手に入れるようなバイクを最初のハーレーとして選びました。少しくらいキックが下手だって,発進に失敗してエンストしても,同じ乗るなら自分の中で最高といえるものを手に入れたいというオーナーの決心は立派です。これからこのジャジャ馬を手なずけてカッコイイハーレー乗りになってください。応援してます。でも会場の端っこで運転に失敗して転倒,レバーがひん曲ってしまったのは秘密です。



オーナーのたっての希望で24インチオーバーのロングスプリンガーフォーク。もちろん特注品です。
最初に木箱に梱包されて到着した時はあまりの長さに驚きました。オーナーも後悔のためか顔色が悪かった記憶があります。
4.5インチのベイツタイプライトの後ろの位置に3インチライザーとドラックバーハンドルのセット。
もちろん,スイッチ類もすっきりと小型化,またコタツ配線を効果的に使用しています。
マスターシリンダーもカワサキのものを流用しています。
これだけフロントが長いとブレーキシステムも役に立ちませんのでスーサイドのノーブレーキ。では,ハンドルのマスターシリンダーは何かというと,リアブレーキ用になっています。
余白 2.2ガロンのマスタンクタンク。ボディカラーがブラック一色で統一されている中で唯一の装飾部分で,キャンディシルバーのフレイムペイントが施されています。写真では分かりにくいかも知れませんが先端に行くにしたがってパープルに変化していく手の込んだ塗装になっています。
先に製作したチョッパーとペイントが揃いになっており,これは製作者が,このロングスプリンガーチョッパーはこれまで製作した一連のチョッパーと同じ流れに属していることを示しています。
けっして,イベントに間に合わせようと,急いでいたので考えるのがめんどうになりペイントショップに前の色違いで塗装してくれと頼んだせいではありません。そう,けっしてそうじゃないったら。



1.5インチのオープンベルトにミッドステップ,スーサイドクラッチシステム。さらにジャッキーシフトで実にワイルドな雰囲気がプンプン臭います。
このスーサイドクラッチ,ロッカークラッチと違いペダルが固定できないので,素早い切り替えが可能である反面,フロントノーブレーキ仕様では有事のとっさの動作でリアブレーキを踏んで停止した時など地面に必然的にこちら側の足を着くことになり,クラッチを切り続けることができません。ゆえにこの組み合わせの場合にスーサイド(自殺)クラッチというネーミングがつくのですが、このチョッパーは手でもリアブレーキをコントロールできるので例外ですね。
ジョッキーシフト先端の50年代テイストなダイスのシフトノブはオーナーの好みでチョイス。
余白 先程述べたようにあまりにフロントスプリンガーフォークが長いためにブレーキシステムが有効ではありません。たとえ取り付けたとしても役に立つのは坂道の途中で停止時にずり落ち防止の場合だけで,それでもリアブレーキで後ろから踏ん張っているほうがより効果的。
それでブレーキシステムを後輪だけに一点集中させ,強力なキャリパーをダブルで装着。フロント,リア各マスターシリンダーがそれぞれ別個でこのロングスプリンガーチョッパーを護ってくれるようになっています。
全体的に旧車テイストなイメージで仕上げられたチョッパーですが,ビレットパーツが眩しいパフォーマンスキャリパーが選択されているのは,このような理由なんです。



ジャンボリーでの1コマ。
ハーレーに乗り馴れている人でも,怖気尽くようなロングスプリンガーチョッパーですが、オーナーの本気で手に入れたいという熱い思いがその険しい壁を乗り越えさせました。情熱さえあれば,どんなバイクだって乗りこなせるんだとこの時,思えました。
余白 ジャンボリーでの走行シーン。ロングフォークなので小回りは利きませんが,このように颯爽と乗りこなすとたいへんカッコイイものです。残念ながら映像の人物はオーナーではなく,このチョッパーの製作者ですが。

APR.2003