1-パウコ・ワイドスプリンガー
2-キングスポーツスタータンク
3-フラットフェンダー加工
4-ワンオフ・シッシーバー
5-ワンオフ・ダブルシート
6-ワンオフ・Zバーハンドル
7-ジョッキーシフト
8-パウコ・UPマフラー
9-オープンプライマリー
10-S&S・Eキャブ,ファンネル
11-各部メッキ仕様

21世紀の現在、ニュースクールやオールドスクールと呼ばれるスタイルがハーレーカスタム業界を席巻していますが、今回シックスモーターサイクルが製作しましたショベルリジッドカスタムはそのような華やかなスタイルからは縁のないバイクであります。
スタイル的には「古本で見たことのある、ちょい昔に流行ったハーレー」で,80年〜90年代中盤といったところでしょうか。ヴィンテージから最先端のスタイルまで様々な情報が容易に手に入りクールなカスタムのお手本にも不自由しない現在の目で見れば、「なんだか野暮ったい」ような気がしないでもないあのカタチです。しかもこの手のカスタムのお約束として何故だか分かりませんが「メッキでピカピカ」「ところかまわずとんがっている」というような風潮がありました。さすがに車検制度の問題でリジッド化は極少数だったようですが、ハーレーといえば御神輿スタイルかこのタイプのチョッパーが大半を占めており、今では旧車で有名なショップでさえもピカピカ・トゲトゲの派手なチョッパーを製作していたほどです。
シックスモーターサイクルではそんな時代の落とし子のようなバイクが中古車としてたまに入荷します。もちろんそんなスタイルでは、お客さんには見向きもされないので外装は一新ということになり、倉庫にはいわゆるイケてないパーツがてんこ盛りというパターン。もちろんオークションでも落札されるはずもなく小さなスペースしかない当店の悩みのタネでした。
ところがある日、ハーレーは詳しくないんだけどショベルのカスタムチョッパーに乗りたいという人の良さそうな若者が時速300・のハヤブサでシックスモーターサイクルにやって来たのです。不良在庫に頭を悩ませていた口の達者なスタッフが彼のような美味しい獲物を見逃すはずがありません。飛んで火に入る夏の虫、あっという間に彼のカスタムプランは決まってしまったのです。殺し文句は「あえて、今」。その気にさせる恐ろしい呪文であります。
そんな訳で、あっさりタンパクな作風のシックスモーターサイクルでは久しぶりのイヤらしいチョッパーになりました。普段使わないようなパーツも時代考証にあわせて投入しつつも、最大限シックスらしさを表現できるように全体のバランスを調整、そのおかげで最初の経緯はともかく完成してみるとカッコイイ,チョッパーになったと自負しております。



ノーマルタンクに比べると幅広のキングスポーツスタータンク。
日本のチョッパーだとスリムにコンパクトにということで、ほとんど使われることのないタンクではありますがアメリカなどではオールドチョッパーに使用されているのをよく見かけます。
それなら前例もあることだしコンセプトにも外れていないという訳で倉庫から引っ張り出してきました秘蔵の品です。
面積が大きいので、パールオレンジベースにキャンディブルーのフレイムパターンの派手な色の組み合せが効果的に過ぎ去りし、ちょい昔の雰囲気を上手く醸し出しています。
余白 スプリンガーと3インチライザーにこだわりのワンオフ・ロボットハンドルという組み合せ。
後ろがとても高いシルエットのチョッパーですので、反対に前は低いポジションを目指しました。昔のバイク映画にも同じようなスタイルのアウトローチョッパーが後ろの方でちらりと写っていたりするので、そんなイメージであります。
そんなロボハンに昨今さっぱり見かけないアルミビレットグリップを選び、中央にそそり立つスパイクナット共々いやらしいハンドル廻りを演出しました。



スプリンガーといえば猫も杓子も純正スタイルという今日に於いて、選択しましたのは昔懐かしのパウコ製3インチオーバーワイドスプリンガー。実に不粋なスタイルが時代を感じさせてくれます。以前はちょくちょく見かけたのに今は不人気パーツ。当店としましても大物不良在庫が掃けて大助かりとはオーナーにはまず言えません。
…筆がすべりすぎたようです。閑話休題。
もちろん、そのままでは味気ないのでリアレッグはガンメタリックペイントで色気を出し、ロッカーアームを交換してPMブレーキシステムを奢っています。
余白 1340ccエンジンはノーマルコンディションでお色直しのみ。それにS&SのEキャブを合わせインパクトのあるロングファンネルを組みました。
プッシュロッドにはゴールドのドクロを飾り,ファンネルと合わせてエンジンにも、いやらしい個性を出しています。
オイルタンクはメリハリを付けるためにメッキをやめてスプリンガーにも使ったガンメタリックでペイント。
微妙なラインを描くパウコ製UPスィープマフラーも昔からの定番スタイルですが取り付けるバイクさえ間違わなければ本当にカッコ良く決まる隠れた名品です。



そう簡単には切れそうもないゴツイ3インチ幅のオープンプライマリーベルト。クラッチ部分はカラーポイントとしてボディと同色にペイントしました。
フリスコスタイル全盛期に反旗を翻すがごとくメッキが光るフォワードコントロール、ダイヤ型に切り抜かれたペグが強く自己主張をガナリ立て、さらにミッションからニョッキリ伸びたワンオフジョッキーシフトはスーサイドクラッチとコンビでこのバイクが只者ではないというところを見る人に強く訴えかけるのです。
余白 異様に長いワンオフシッシーバーと中央で十字に輝くクロステール。
先程にも述べましたがこのチョッパースタイルを決定付ける大きなポイントです。
エッジの立ったワンオフダブルシートもパンチが効いていますね。
つらつらと書き列ねてきましたが正直、このバイクは外野のうるさい御託はどうあれオーナーにとっては、キックを踏み込みハンドルを握った時にV2,1.3・強の荒々しいエンジンの鼓動がしびれるほどにハートを揺さぶるであろう気持ちが全てを物語ってくれる気がします。

JUN. 2004