1-1955年純正ガソリンタンク
2-1971年純正前後フェンダー
3-1948年純正スピードメーター
4-S&S,Eキャブ
5-純正バナナシート
6-アーリータイプ2in1マフラー
7-CMS社製グリップ,ペダル
8-アーリープライマリーカバー
9-前後サス,ローダウン
10-ファイアストーンタイヤ
11-外装ペイント
12-ホイールペイント

最初に白状してしまうとこの1200ccのFLHは私が所有しているものです。もともとフルドレスのオリジナル状態でしたが古き良き伝統のスタイルの良さを最大限に表現するため、外装を全て取り替えました。シックスモーターサイクルではどちらかというとチョッパー製作をメインにしているので倉庫にはノーマルパーツがたくさん眠っています。今回はその中から自分のイメージどうりのパーツを掘り起こし細かなものはインターネットなどを利用して揃えました。

普段はチョッパーイメージのシックスモーターサイクルではありますが、やみくもにオリジナルを否定しているわけではありません。決して意味なく切った貼ったしているわけではないんです。残すところはきっちり残し切るべきところはバッサリとチョップする。伝統のスタイルを尊重し、そのうえで独自のアレンジを加えることができる者だけが本当に良いカスタムを造れるのではないでしょうか。

デイリーユースを考慮すれば、ノーマルで前後のディスクブレーキが装備されていたりセルモーター始動だったりとショベルはなにかと便利です。工業製品としては大量生産のための簡略化や合理化が目立ち、旧車のような手造り感は減少してしまいましたが、今回のカスタムはそこのところをモデファイしてみようという試みです。
目指したスタイルはいわゆる「50年代の香り漂うFLHストリップ」で自分好みの旧車テイストを盛り込んだめずらしくもない定番カスタムですが、楽して普段のアシにする利便性と伝統のスタイルを正当に受け継ぐデザインの良さの両方を求めるとFLHではこのカタチが最も適していると思えます。巷で「FLHストリップ」の人気が高いのも納得できますね。

ただし、このバイクにはショベルベースとしては、やりすぎかなと思えるほどに「見栄え」というものに相当のエネルギーを注ぎ込んでいます。
もちろん当初は私もここまでする気は毛頭無く、ショベルを気軽に乗れるハーレーとして手に入れたのですが、元来凝り性な性格だったのが災いし、上記のようにちょっとした出来心からパーツを変えてみたのが運の尽き。1ケ所を変更すればその繋がりであそこもこちらもという具合で後は雪ダルマ式でした。
こんなことなら最初からちゃんとしたデュオグライドあたりでも買っておけばよかったのですが、すでにカスタムは私にとってバイクの楽しみの中で大きなウェイトを占めているので純正度の高い旧車を手に入れて畏れ多くてカスタムできずにストレスが溜まるのは避けたかったのです。例えば、ちょっとした気分しだいでバイクのカラーリングが気負いなく自由に変えられるなんて私にとっては素晴らしいことです。
それでは、その偏ったこだわりのほどを紹介しましょう。




倉庫にぶら下がっていた某筋から入手した1955年純正タンク。タンク周りは全て純正品でまとめてあります。内部で見えませんが基盤も純正品を使わないとタンクとメーターダッシュがきれいに組み合わないんです。
メーターは私が以前乗っていた48パンから外した形見の品で、オールドアメリカンな雰囲気がたまりません。
ガソリンキャップは軍用バイクWLAのものをブラックペイントして流用。これは脱落防止チェーン付きのすぐれものです。
メインスイッチは純正のキーを使いたかったのでオリジナルのFLHの物をそのまま使っています。
ペイントは56年のパターンをアレンジしてモノトーンで表現しました。
余白 ハンドルはノーマルの2ピースタイプをそのまま使い、取り付け角度をグリップが地面と平行になるぐらい上げています。
ブレーキ側だけスイッチボックスを残しウインカースイッチなどを片方にまとめて処理。配線はハンドルの中通しにしてあります。
丸いミラーは60年後半あたりに販売されていたBUCO製のものを使用。もとは日本車用なのでミラーの部分だけをノーマルのステーに合わせて装着しています。
グリップは最近流行りのシカゴ製をチョイス。キッチュなデザインで年月を経たプラスチックの質感が魅力ですが、雨の日は滑って使いにくい困りもの。イエローカラーはこのバイクのポイントカラーです。



エンジンはノーマルの1200cc。シリンダーはオールドテイストを狙ってシルバーペイント、ポイントカバーはフィンのあるものをサンブラ加工して装着。
スポーティな要素も欲しかったのでキャブレターは私の大好きなS&SのEキャブをセレクト。それにBキャブ用の厚みの薄いS&S-CYCLEロゴ入りのカバーを加工して合わせています。
エキパイは社外品のアーリーショベル用の2in1を使い、エンジンとの接合部分には純正のシャークフィンを取り付けました。
キックカバーとアームは雰囲気重視でパンスタイルのものに変え、グリップと揃いのシカゴ製のキックペダルを奢ってみました。
余白 プライマリー側もノーマルそのままでは何か物足りなかったのでプライマリーカバーをアーリーショベル時代のダービーカバーホールのない純正ものに変更。そのままではすんなりとは付かないので、試行錯誤しながら組み合せしました。
いつも思うことですが、どうして私はこうめんどくさい事をするのでしょうか。もちろん、たいへんなのは頼まれた方なのですけども。
フットボードは振動対策のされていないリジットマウントのものに交換。ベースはブラックでリペイントしてフロアゴムは新品を使用しています。
後期型リアペグマウントはノーマルでもユニークなフォルムなのでそのまま残し、ペグのみイタリア製のホワイトステップラバーに交換しました。



サイレンサーは2in1用のショートシガータイプ。排気関係のパーツはどちらかというと消耗品で程度の良いオールドパーツが少ないのでこれは現行の社外品です。
その先にアメリカ帰りの知人に譲って頂いたトランペット・チップを取り付け。このパーツ、パンヘッドなどに使われているのをよく見かけますがモノは中身がスッカラカンのメガホンですので性能アップを狙って付けるものではなく当時流行った飾りだと思います。
しかしマフラーのテールエンドは結構重要で、外観のフォルムがカスタムされてスタイリッシュになるほど全体に多大な影響を及ぼすことになるので手は抜けません。
余白 シートは72年から74年までスーパーグライドに採用されていた純正モノ。
通称、「バナナシート」と呼ばれるシートで、模型業界で有名なタミヤが70年代に発売した1/6スケール「FXE1200」で再現されていたシートでもあります。
なんとなく野暮ったい雰囲気のコブラシートにも似たこのシートはハーレー歴代のBIG TWINの直付け純正シートでは最も厚みの薄いもので、ハーレー本社が当時、スーパーグライドにスポーティなイメージを与えようとしていたことがうかがい知れる貴重なパーツです。
また薄いとはいっても中にスプリングでも入っているのか、実にソフトな座り心地でサスガは純正だと思わせてくれる逸品です。



前後フェンダーは71年のFLHのものをフェンダーチップごと移植。オリジナルのデュオテールランプではありますがこの時代になるとガラスレンズではなくGUIDE社の刻印はあるもののプラスチック製になります。
ノーマルウィンカーはリアビューをシンプルに演出するためにオールドタイプのシグナルステーを使いテールランプと分割・簡素化。
ナンバーボルトは当時ヴィンテージハーレーで流行っていたというジュエリータイプのリフレクターになっています。
タイヤまわりは50’Sを意識してステンレススポークにホイールリムはホワイトペイント仕様。それにホワイトレターを施した厚みのあるファイアストーンレプリカタイヤを組み合せています。
余白 穏やかに流れ降りるフロントフェンダーのライン。その中ほどに誇らし気に付いたクローム仕上げのフェンダーオーナメントがなんとも良い雰囲気を出しています。実際は製造されてから長い年月が経ちかなりヤレてはいるのですが、レトロフューチャーなデザインが21世紀の現在でもなお我々には新鮮でカッコ良く目に映ります。
一昔のハーレーでこのテの「いっぱい色々ついてるぞ」的なカスタムスタイルは御神輿バイクやデコレーションハーレーとか呼ばれ悪趣味なものでしたが、旧車を中心とした最近の流れはパーツを吟味して決してやり過ぎない品の良いものに変化してきたようです。取り払うことが基本のチョッパーとは反対のジャンルですがこれはこれで奥の深い世界です。